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第849話

Penulis: 宮サトリ
瑛介は唇を引き結び、不機嫌さの滲む表情を浮かべていた。明らかに、彼女の言葉が気に入らないようだった。

弥生はぐっと力を込めて自分の手を引き抜こうとした。

その瞬間、瑛介の目にわずかに傷ついたような色が浮かんだ。

彼女が手を引こうと悪戦苦闘しているなか、浩史が口を開いた。

「それでは。僕たち、そろそろ空港に向かわなければならないので、これで失礼します」

そう言うと、浩史は自然な動作で由奈の手を握り、そのまま引き寄せて連れて行った。

「え、えぇ?」

由奈は突然手を引かれたことに驚きつつも、すぐに弥生へと振り返りながら叫んだ。

「弥生、また会おうね!向こうで落ち着いたらすぐ会いに行くから!」

弥生は手を振りながら応えた。

「うん、絶対にあう!またね」

由奈は浩史に連れられて去っていった。

その場には、瑛介と弥生だけが残された。

数秒間の沈黙の後、弥生はついに口を開いた。

「......もう行っちゃったのに、まだ手を離さないつもり?」

その言葉に、瑛介は手元の二人の手を見下ろし、唇にわずかな笑みを浮かべた。

「なんで離す?」

弥生は自分たちの手を見つめながら、ため息交じりに答えた。

「ただの礼儀で握手しただけでしょ。そんなに気にすること?」

「気にするよ」

瑛介はまっすぐに彼女を見つめた。

「他の男に君が触れられるのが、嫌なんだ」

「触れたって言わないよ。ただの握手だよ」

そう主張する弥生に、瑛介はさらにきっぱりと言った。

「それでもダメだ。握手でも触れてるのは事実だろ」

諦めたように沈黙したそのとき、瑛介はじっと彼女を見つめながら尋ねた。

「健司から聞いたよ。君、弘次のことをいろいろ訊ねてたんだって」

その言葉に、弥生の動きが止まった。

瑛介に直接訊けないから健司を通じて訊いたのに——それがもう伝わっているとは思っていなかった。

そして、あっという間に本人が問い詰めに来た。

「......うん。訊いたよ。だから何?」

弥生の目にはわずかな反発の色が浮かんでいた。まさか、このことで責められるとは思っていなかったのだ。

瑛介はしばらく黙り込んだあと、低い声で問いかけた。

「僕は、君にとってそんなに信用ないのか?」

「え?」

弥生はその質問の意図がわからず、戸惑った。

「僕は君の信頼に足る男じゃない?だから
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